茶道とjazz
日本の伝統文化、茶道と、アメリカ生まれの音楽、JAZZ。この二つ、実はとっても似ているんです。
一期一会(いちごいちえ)
「一期一会」とは、茶道でよく言われる言葉です。よく掛け軸にも書かれていたりします。意味はというと、一生に一度の出会い。その日、その場所、そのお道具、お花、そして、亭主、お客も含め、全く同じ機会は二度とはないということです。だからこそ、その日の茶会に心を尽くす…。そういった出会いを大切にする心構えとでも言いましょうか。茶道では、そういった一生に一度の出会いを大切に味わう心をとっても大事にしています。
毎日は同じようだけれども、決して全く同じではない。心は変わる。子供は大きくなってゆく。昨日は失敗した目玉焼きが、今日は上手に焼ける。そういう二度とない今日を愛しく感じる気持ちがあれば、人生をもっと楽しめそうですね。
さて、そんな楽しみ上手は、日本の茶道だけのお話ではありません。
JAZZって、どんな風に演奏するかご存知ですか?これが、まさに一期一会を楽しむスタイルなのです。
ピアノや、管楽器、ギター、ヴォーカルなどで一つの曲を演奏する時、コード進行だけは同じですが、あとは、個々人の好き勝手!です。各楽器のソロが必ずありますが、メロディがクラシックのように原曲のまま演奏されることは、ほぼありません。即興で、ほとんど作曲?しながら演奏しています。
それでもちゃんと1曲出来上がってしまう!という、何とも行き当たりばったりなスタイルなのですが、これがすごく面白い!演奏者のその日、その時の気分が100%の、まさに2度とないプレイ。
その演奏を聴いて、聴いている人や、他の演奏者が触発されて、素晴らしい化学変化が起こり続けるという、まさにお茶会での一期一会と同じことが繰り広げられているのです。
のむばかりなることと知るべし
今回は私の大好きな、茶道とJAZZがとても似ていると、以前から感じていたことを書きましたが、他にも面白い共通点のあるものが世界にはたくさんあるのだろうと思います。
「茶の湯とは ただ湯をわかし 茶をたてて のむばかりなることと知るべし」
利休百種に詠まれている一首です。たくさんのお作法やお点前、お道具の扱いや、茶室の普請や、花あしらいなどなど、総合芸術とも言われる茶道ですが、ただ、おいしいお茶を点てて飲むだけのことだと、それに尽きるとの言い伝えです。
そのおいしい一服を点てる、飲むために、本当に色々な心尽くしをして、稽古も重ねる。
そして、それはJAZZも同じだと思うのです。素晴らしい演奏をするために、即興も平気でできるくらい練習を重ね、繰り返しを積む。楽器と自分のコンディションを保ち続ける。
ふたつとも、ただ一瞬を楽しむために、無心の境地に至れるほどになるまで、研鑽を積みます。遊びは、ここまで来ると芸術となるのかもしれませんね。ただお茶を飲むだけ、ただ演奏するだけ。そこにある空気を支配してしまうような、不変の何かを、なんという言葉で表したらよいのか私にはわかりませんが、一度知ってしまうと、また目指さずにはいられない本当に幸せな空間です。