卒業式の袴

ご卒業を迎えられる皆様、おめでとうございます。今年は新型コロナウィルスの影響で例年通りのお式ができない学校も多いようで、とても残念ですね。だけど、大切なものはもう積み上がっていて、次の舞台へジャンプするだけ。このお休みの間に心の準備を整えて、春からの生活を思いきり楽しんで下さいね。

今日は、卒業式に着られる袴についてのお話です。少し前から、卒業式に袴を着用するのが流行し、今や小学生の女の子達にまで広まっています。でも、なんで袴なん?昔の女学生が着ていたから?宝塚(音楽学校の卒業式)でも着てるから?と、ちょっと不思議に思ったことはありませんか?

袴の歴史

女性の袴は、いわゆる十二単といわれる平安時代の上流階級女性のフォーマルファッションとして用いられたことから始まります。それ以前までは男性だけが着用するものでした。この平安時代の女性の袴は色は赤系で、とっても大きく、長さも足より随分と長いものでした。立つ時は踏んづけちゃってます。と言っても、平安時代のお姫様は立って歩くことはあまりなく、膝で歩いて?移動していたそうです。当時は裸足だったので、長い袴で良かったのでしょうね。

そして、江戸時代に今につながる袴の形になり、急にブレイクしたのが明治時代。その流行を牽引したのはやっぱりその時代の女の子達でした。明治31年頃から男性用の袴を着用して女学校に通う女の子達が出てきます。女学生達は、当時の宮中の女性袴のイメージに憧れていたそうです。そして、どんどん流行が広がります。

明治32年に高等女学校令(小学校卒業後の女子中等教育制度の整備)が出され、女子の体育振興の風潮もあいまって、着物よりも動きやすい袴が学校側にも受け入れられ、服装規定に袴も良しと正式に許可。それまでの男性用の袴ではなく、スカート状になった女性用の袴も開発されて、女学生の装いとして定着してゆきます。大正末期に洋服が主流になり、昭和初期にセーラー服の制服に統一されるまで、袴の姿が続きました。

当時の女学生達は、袴の紐結びでおしゃれをしたそうです。習っている先生と同じ結び方にして楽しむ女の子も多かったとか。この時代の女学校の先生も袴を着ていました。

高等女学校に行ってお勉強できるのは、高等小学校に行っていた女の子の1割にも満たなかった時代です。小学校だって国中の女の子全員が通っていたわけではありません。ごくごく少数の特別な階級の女の子達だけです。それだけに、新しい時代の幕開けのような希望に満ち、毎日通学する女学生達の姿はとてもキラキラ輝いた存在だったに違いありません。

なぜ卒業式に袴を着けるようになったのか

今でこそ、男女平等は当たり前。女性も高等教育を受け、社会に出て男性よりも活躍していたりしますが、少し前の時代までは、小学校にも通っていない女の子達が五万といたのです。

そして、女性が教育、さらには高等教育を受けるようになった歴史の始まりが、この明治時代。それを象徴するのが女学生の袴姿であるというわけです。

今、卒業式に袴が着られるようになったのは、女性が教育を受ける権利を手に入れた歴史の始まりを象徴する姿に、現代の女の子達も何か感じるものがあるからではないかと思います。未来への希望でいっぱいの気持ちがシンクロしているのかも知れませんね。

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